表具という枠に封じ込めた日本のデザイン
オリジナルな現在(いま)。
これは表具に対する軸源の想いを述べたものです。
人と人との出会いのみでなく、書や絵画などの思い出の品や形見なども、生命と同じように取り替えがきかないものです。
私たち日本人は、そうしたもの・事を、一期一会として表具の対象にしてきました。

「不易流行」(※「不易」はいつまでも変わらないこと、「流行」は時代々々に応じて変化すること)という言葉がありますが、そうした取り替えがきかないものや事を、一期一会として大切にしたり表具するいつまでも変わらない心の在り方を、表具における不易と呼ぶ事が出来るでしょう。

それでは流行とは何でしょうか。

時代とともに生活のスタイルや建築様式が変わるように、ものの見方、見え方も変わります。例えば床の間が減少していき、掛軸や額などを飾る場所は、以前のように床の間だけではなくなりました。この事は、表具のかたちを変える大きな要因となりました。

床の間は神聖な、非日常的な空間という役割を有していました。床の間が唯一の飾る場所であった時、掛軸の表装は自らを目立たなくする事を主題とし、目立たない事でその掛軸の表装としての役割を果たせていました。

しかし、床の間が減少してゆくと同時に、床の間から離れていった表具は表具それ自体に、かつて床の間が有していた役割を求められるようになったのではないでしょうか。

それが表具における不易流行の「流行」であると考えます。

本紙が「主」、表具が「従」であるという従来の約束事だけでは、対応できなくなってきました。そうした変化の中で表具に求められるものに向かい合う時、オリジナルな覚悟、志向が必要になるのだと思っています。

屏風は日本の折りたたみ文化の象徴的な調度品です。屏風は二曲、四曲、六曲と折りたたんだり広げたりする機能上、その丁番は優れた仕組みを有しています。
屏風本体面を最大限に効果的に使う為に、丁番は見えないように作られております。この写真の屏風は、丁番を隠すのではなく、見るためにデザインする事でこれまでの屏風にはなかった機能を持たせました。
ウェーブ状にデザインされたスライド丁番は、その角度や大きさを変えたり、上下を反転させる事でウェーブの形が変わります。また、左隻、右隻の色を変えたり、本体や丁番の形も居住空間に応じてデザインいたします。
従来の屏風のように書画作品を貼り込む事ももちろん出来ます。木製の為重量があり、安定度が高くワンルームのパーティションとしてお勧めいたします。
この額は、アルミ丸棒を熱加工によって折り曲げ、シンプルなジャングルジムのような構造をなしています。
この額を介して作品を見る時、視点はジャングルジムのように内側から外側へ、外側から内側へと反転し、不思議な感覚を抱く事が出来るかもしれません。
それがどのような事を意味するかは定かではありませんが、表具とは何か、額とは何かを問う中で生まれてきた試みの額といえるものです。
一方こちらは、作品台にアルマイトを使い、上下プレートで本紙を挟み込む形の色紙額です。写真ではプレート部分に染布を貼り込んでいますが、これを塗装仕上げにしたり、また別の素材にしたりと組み合わせに自由度があるように設計しています。
因みに、こちらは色紙だけでなく短冊額タイプのサイズもありまして、軸源オリジナル額でも人気の商品となりました。
こちらは意匠登録認可を受けた商品 扇子のしつらえ「かなめ」です。
これまでにも、書道教室の作品展などで扇子を飾る機会があったのですが、そのような場合、扇子の周りにピンなどを打ち込み固定するやり方が普通でした。
これらは安定性がよくなく、飾付に時間もかかっていたので、そこから「もっと簡単に、もっと美しく」飾る方法はないか模索を始めました。
扇子の骨の間に写真のような留め具をはめ込み固定するというアイデアから開発を重ね、商品化する事できました。
留め具両端の一部分に磁石を埋め込んでいるので、壁に飾る時は、扇子に装着させた留め具の磁石に押しピンを付けるだけで、簡単に固定できます。
 
写真上・左は、地元の高校の卒業式で、書道専攻の生徒が卒業生を送る言葉を書き、式場と教室に賑わいを与えました。これらは磁石に対応した壁やパネルでしたので、100近くあった扇子も設営も、あっという間に終えることが出来ました。

展示用の自在掛けなども時代の要求によって使いやすいものに進化してきましたが、この例のように、「もっと使いやすいものはないかな」という日常の思いを形にするのも、表具屋の仕事の一つであると考えています。

そのような意味では、額や屏風といった「いわゆる表具」のデザイン以外にも、このような商品の製作もしていました。
一輪の草花にスポットが当たるように30mmの暑さのアクリルガラスを用いた一輪挿し「花ポケット」です。
各サイズのミニ・小・中・大をオブジェ感覚で組み合わせる新しい花器で、全てが1:1.44の白銀比で作られています。これは法隆寺の金堂や五重塔の庇(ひさし)部分にも用いられている、古来より日本人に好まれた比率となっています。
その白銀比を現代の素材に取り入れたオシャレで可愛い一輪挿しです。