さらに、現代の建築空間、居住空間と呼応するようなデザイン性を有する表具も30数年来にわたって取り組んでまいりました。
ところで、表具のすべてには「裏打ち」という基本的な技術が施されています。この「裏打ち」によって様々なものを表具に仕立てる事が出来ます。例えばお子さんが描かれたノートの落書きのようなものから、思い出の品物、着物・振袖、また団扇(うちわ)や扇子も表具の対象になるのです。
「こんなものでも飾れるようになるのかな?」と思ってらっしゃる時など、どうぞお気軽にお声かけ下さいませ。お客様と共に表具の世界を作り上げていく事も、表具師の大切な仕事であると思っております。
「裏打ち」は、何を裏打ちするかその内容によって、糊の濃度を変え、和紙の種類や厚さを変えます。
裏打ちに使う和紙は、楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物の皮を細かく繊維状にしたものから作られており、それらはヘミセルロースを含み薄くても強靭なもので、日本が世界に誇る和紙の特徴になっています。
表具の対象になる作品そのものを「本紙」と呼びますが、本紙に直接施される裏打ちを「肌裏」と呼び、肌裏の出来が表具の出来を左右する程の大事な作業です。
そうした作品を何年、何十年と後世に伝える為には、糊の濃度が重要になります。濃すぎればごわつき、薄すぎれば裏打ちが剥がれ、浮いたり折れの原因となる為、糊の濃度は表具屋の秘伝とも言えます。
また、糊を和紙につける為の刷毛も大切な道具です。水刷毛、糊刷毛、撫刷毛、打ち刷毛など様々なものがあり、毛の種類もたぬきやいたち、馬毛やシュロなどがあり、毛の柔らかさやコシの強さがそれぞれ違います。これらを用途・目的によって使い分けます。