今回は掛軸の補修の紹介です。
掛軸と言っても本紙に軸棒と八双をつけた簡素なものなのですが、お客様のお住まいの地域に昔から伝わるとても貴重なものでした。
見て頂くとおわかりかと思いますが、天国と地獄が描かれた宗教画で、技術的には巧いものではないかもしれませんが、人の死から地獄の有り様、そして極楽との対比など事細かに描き込まれており、実物を見ると強い想いを感じました。
そしてこれは地域の住民を集めて行われる講で使われており、その際、今は失われてしまった「ホヤマ」という口伝の節があったという事など、興味深いお話を色々と教えて頂きました。
補修としてはお客様のご要望もあり、基本的には現状をそのまま残し、折れている部分などを綺麗にする事となりました。作業の際に裏打ちをとり、軽い洗いも施します。
裏打ちを剥がした状態で折れぶせを当てていきます。折れぶせとは和紙を細く切ったものに薄く糊をつけ、折れた部分を中心に乗せていく作業で、折れを直す以外にも補強の意味もある補修の基本的な技術です。
部分と裏の状態です
補修後の掛け軸(全体)はこうなりました。補修後の写真、部分も撮っておけばよかったです…
全体像でも折れがなくなり綺麗になったのがおわかりかと思います(写真クリックで拡大できます)。